冬が深まり、経済だけではなく社会全体にも沈滞ムードが広まっていたある日、ひょっこり彼が訪ねてきた。トレードマークである笑顔は消えて、何か事情のありそうな暗い表情を浮かべていた。はたして、彼女はこう口を開いた。「私、会社をクビになりそうなんです。不況で業績が低下したから、結婚した人は退職してくれというんです。TOEICレベルAも役に立ちそうもありません。会社というものには正しいルールがないなんて知りませんでした。さほど能力もない男性が一家の主だからという理由で残るいっぽうで、能力もあり、まじめに働いてきた女性が旦那さんがいるからとリストラの憂き目にあうなんて」そうか、結婚早々職を失うのか。といって、クビになりたくないがために離婚するのではシャレにもならない。