「通読の能力が生じたからだと考えられる」「ツウドク?」「そう通して読む通読。精読の反対語だね。私たちがふだん、小説やエッセイを読むときは、たいてい通読をしているものだ。単語一つひとつに神経を使いながら読むのではなく、文章全体の文脈や筋に従って流れるように読んでいく方法だね。この通読の能力がつくことで、かりに意味のわからない単語が混じっていても、文脈や筋の流れにそって文意が全体的に把握できるようになる。言葉一つひとつの意味ではなく、全体の文意が理解できるようになるんだ。不思議なことだが、かならずそうなる」「はあ、なるほど。でも、たしかにそうなるんだろうなという気持ちと、ほんとうにそんなにうまくいくのかなという気持ちが、正直、半分半分ですね」「いまは、それでもいいよ。やがて近いうちに、キミもかならずそうなる。人間が言語を自然に習得する過程で、だれにでもかならず起こることだからね」